【ネタバレあり】『黒豚王子は前世を思いだして改心する』感想|嫌われ悪役が努力で最強イケメン王子に!


どうせまたテンプレ転生でしょ?
そんな先入観をいい意味で裏切ってくれるのが、『黒豚王子は前世を思いだして改心する』です。
本作は、“死亡エンドが確定している悪役キャラ”に転生してしまった男が、前世の知識と努力を武器に人生をやり直していく物語。
主人公ブラットは、肥満で高慢、性格も最悪な“嫌われ王子”。
けれど、彼はその運命に抗い、変わることを決意します。
剣術にダイエット、仲間との信頼関係づくり……その一つひとつが、かつての自分との決別の証。
「変わる勇気」がどれほど尊いか。
そして、「人はここまで変われるのか」と思わせてくれる、爽快で熱い異世界転生ファンタジーを、ネタバレ込みで徹底レビューしていきます。
📖 作品概要
- 作品名:黒豚王子は前世を思いだして改心する
- 原作:はりや(カクヨム連載)
- 漫画:空倉シキジ(作画)
- ジャンル:異世界転生/悪役令息/成長ファンタジー/ラブコメ
- 連載媒体:カクヨム、ComicWalker、ピッコマ、BookWalker ほか
- 既刊:コミックス1巻~(2025年5月時点)
- 対象読者層:10代後半〜30代/男女問わず楽しめる
🐷 あらすじ(ざっくり紹介)
ゲームオタクのアラサー会社員・黒川勇人は、ある日突然、自分が大好きだったRPGの世界に転生する。
しかも、そのキャラは“死亡確定の悪役王子”――ブラット・フォン・ピシュテル、通称「黒豚王子」。
傲慢、無礼、肥満体型。
そして物語では最後に勇者に討たれる運命。
そんな絶望的な立ち位置から始まる物語だが、彼は“前世の記憶”を思い出し、未来を変えるために動き始める。
剣術の修行、減量、周囲との信頼回復…
ありとあらゆる手段を使って“死亡フラグ”をへし折ろうと奮闘する。
🌟 見どころ3選
① “死亡エンド”回避に全振りする、主人公の本気すぎる努力
「このままじゃ、勇者に殺されて終わる人生なんて…絶対に嫌だ。」
転生早々、自分が“死亡確定の悪役キャラ”であることに気づいてしまったブラット。
その瞬間から、彼の人生は180度変わります。
それまでは高慢で横柄、周囲からも忌み嫌われていた彼が、死なないためにまず始めたのが――
人間としての根本的な改善です。
太った身体を鍛え直し、毎日ダイエットと筋トレに励む日々。
剣術の修行では、前世のゲーム知識をフル活用しながら、実際の戦闘に耐えられるスキルを習得していきます。
加えて、かつてぞんざいに扱ってきた使用人や友人、婚約者に対して、誠実な言葉と態度で信頼を取り戻そうと努力します。
この“改心”が嘘ではなく、心からのものだと伝わる丁寧な描写が本作の魅力。
主人公が“死なないため”という利己的な動機からスタートしても、
次第に誰かのために動ける人間に成長していく姿には、胸が熱くなります。
② 学園での“イケメン大変身”エピソードにスカッとする!

あのブラット様…まるで別人じゃない…!?
見た目も性格も、もはや“黒豚王子”ではない。
そう言われるほど劇的に変貌を遂げたブラットが、久々に王立学院に戻るシーンは、本作屈指の爽快展開です。
顔が引き締まり、筋肉質な体に変わり、優しさと礼儀を兼ね備えた好青年へと成長した彼に、
かつて彼を見下していた貴族子息たちは驚愕し、
遠巻きにしていた女性たちからは好意的な視線が向けられます。
なかでも、婚約者マリーの戸惑いと揺れる心情が丁寧に描かれており、
「過去のブラットを知っているからこそ、今の彼に惹かれていく」というラブコメ要素も加わってドラマ性がアップ。
この「手のひら返しされる瞬間」のカタルシスは、努力系主人公ならではの醍醐味。
見た目だけでなく、行動や言葉遣いも含めた“全身改造”の成果が、読者にしっかり伝わるのが気持ちいいです。
③ 婚約者マリーとの距離感の変化――恋と信頼のリスタート

あんなに冷たかった彼が、どうして…?
物語の前半、ブラットと婚約者・マリーの関係は最悪です。
表面的には婚約関係にあるものの、マリーはかつての彼の横暴な態度に心を閉ざしており、会話も冷淡そのもの。
ところが、前世の記憶を思い出し“死亡エンド回避”に向けて改心を決意したブラットは、まずマリーとの関係改善に取り組みます。
これまで自分本位だった態度を改め、彼女に対して丁寧に接し、誠意を込めて対話を重ねていく。
特に印象的なのが、マリーの好物をさりげなく用意したり、気遣いの言葉をかけたりする細やかな描写。
“俺が変わったことに気づいてほしい”という一途な想いが行動ににじみ出ていて、読者としても胸がじんわり温かくなります。
マリー側もまた、少しずつ表情がやわらぎ、
「この人はもう前のブラットじゃない」と感じ始める――
この丁寧な心の変化の描写が、物語の厚みを支えています。
激しいバトルや劇的な展開がまだ控えている今だからこそ、
この“信頼の再構築”に焦点を当てたパートは、静かだけど確かな感動と説得力がある見どころです。
⭐ 総合評価(5段階)
評価項目 | 評価(★5) | コメント |
---|---|---|
ストーリー | テンプレながらも“努力と成長”の筋がしっかり通っており、感情移入しやすい展開。テンポも良く飽きさせない構成。 | |
キャラクター | 主人公の内面変化が丁寧に描かれていて好印象。ヒロインや脇役の感情も自然に動いている。 | |
作画・ビジュアル | キャラの表情や体格の変化が見やすく描写されているが、バトル描写は今後に期待。動きの演出に若干の物足りなさも。 | |
オリジナリティ | 異世界×悪役改心はやや既視感があるが、ブラットの“本気の努力”描写が差別化の鍵に。 | |
読みやすさ | 展開が分かりやすく、セリフも読みやすい。主人公の成長が直感的に伝わる構成は非常に親切。 |
📝 総合評価:
(3.7 / 5.0)『黒豚王子は前世を思いだして改心する』は、一見すると「よくある異世界転生もの」に思えるかもしれません。
死亡エンドが確定している悪役に転生してしまい、それを回避するために努力する――
設定自体はテンプレート的で、目新しさを感じにくいのも事実です。
ですが、本作が光るのは「どう変わっていくか」のプロセスと、その描き方の誠実さ。
主人公ブラットは、前世の記憶を思い出した瞬間から、自分の傲慢さを悔い改め、見た目も中身もまるごと変えようとする。
しかも、それが魔法やチート能力による“棚ぼた的な変化”ではなく、
汗と努力、そして人との関わりの中で積み重ねていくという地に足の着いたアプローチなんです。
剣術の修行、減量、他者への謝罪と感謝、さりげない気遣い――
どれも派手ではありませんが、だからこそリアルで、心に沁みる。
そして、かつては彼を見下していた周囲の人々が、
徐々に態度を変え、彼を見直していく過程もまた秀逸。
「見た目」や「血筋」だけではなく、“行動”によって信頼が取り戻されていく描写は、転生モノとして一段深い読み応えを感じさせます。
また、婚約者マリーとの関係性の変化も見逃せません。
ただのラブコメではなく、過去の悪行に向き合いながらも、誠実に歩み寄ろうとする姿は、
読者の心をじわじわと掴み、「もう一度やり直すことの尊さ」を感じさせてくれます。
絵柄はややクセがあり、バトル演出や緊張感においては派手さに欠ける部分もありますが、
その分キャラクター同士の感情の動きや細かい心の機微がしっかり描かれており、
読み進めるほどに世界観と人間関係の温かさが染みてきます。
🧾 まとめ|「変わりたい」と思った瞬間から、物語は動き出す
『黒豚王子は前世を思いだして改心する』は、
“嫌われ悪役”という最悪のスタートラインに立たされた主人公が、
努力と誠意をもって人生を再構築していく異世界サクセスストーリーです。
異世界転生というテンプレートに、
「死亡エンドを回避するために本気で変わろうとする」というリアルな動機を乗せることで、
ただのチート無双ではない、地に足のついた成長物語に仕上がっています。
剣術やダイエットのような分かりやすい成長だけでなく、
人との関係を一から築き直す姿勢、過去の自分と向き合う姿勢が胸を打ちます。
派手さは控えめですが、読めば読むほど主人公に愛着が湧いてくる。
そして、「自分も何かを変えてみようかな」と思わせてくれる、
そんな優しさと力強さをあわせ持つ作品です。
もしあなたが、
- 異世界ファンタジーに少し疲れてしまった
- でも“人間ドラマ”のある物語が読みたい
- 頑張る主人公を応援したくなる話が好き
――そんな方であれば、この作品はきっと刺さるはずです。
変わりたいと願ったすべての人に贈る、もうひとつの転生譚。
ぜひ、一度手に取ってみてください。