心が震えた…『隻眼の残像』は、まさに“原点回帰”の劇場版コナンだった

さあ、静かな幕開けだね。
今回は“心で観るコナン”だ。

一見地味でも、じわじわと効いてきますよ、まるで静かに溶けていく氷のように。
派手さはない。
恋愛要素も控えめ。
それなのに、どうしてこんなに心が揺さぶられるんだろう。
『名探偵コナン 隻眼の残像』を観終えたあと、しばらく席を立てませんでした。
誰かの正義が、誰かの苦しみになりうるという現実。静かな怒りと、静かな哀しみ。
長野県警・大和警部の過去と向き合うコナンの姿に、ただの推理劇では終わらない“人間ドラマ”がありました。
これは、まさに原点回帰のコナン。
心を打たれたすべての人と、語り合いたくなる一作です。
作品の概要と立ち位置

近年の“爆破枠”とは一線を画す本作、じっくり味わいたいね。

静かだからこそ、ひとつひとつの描写が沁みるんです。
2025年公開の劇場版コナン『隻眼の残像』は、これまでのシリーズでおなじみだった爆破や超人的アクションを控え、ミステリー本来の面白さに立ち返った意欲作です。
近年の劇場版ではアクションとキャラクターの魅力が前面に出される傾向が強まり、シリーズのファン層を広げることに成功してきました。
しかし、その一方で「ミステリーとしてのコナン」がやや薄れていたと感じていたファンも多かったのではないでしょうか。
本作ではその“原点”を改めて見つめ直し、静かで濃密な物語を紡いでいます。
事件の構造はシンプルでありながらも奥行きがあり、サスペンスの緊張感と人間の感情が絶妙に絡み合います。
事件の発端、登場人物の背景、伏線の回収まで、一本のミステリードラマとしての完成度が非常に高く、「ここ数年で一番ミステリーらしい」との声も上がるほど。
シリーズの中でも異色でありながら、本来のコナンの魅力を再認識させてくれる一本です。
心に残ったポイント5選(共感重視)
1. 長野県警と“大和敢助”の重すぎる過去
今回の事件の鍵を握るのは、長野県警の警部・大和敢助(やまと かんすけ)。
35歳の敏腕刑事です。
彼の印象的な杖と隻眼は、10か月前の雪山での事件捜査中、雪崩に巻き込まれ、犯人に左目を撃たれたことで負った負傷によるものです。
この事故の際、大和はしばらく行方不明となり、同僚や幼なじみの上原由衣、そしてライバルであり同級生の諸伏高明らは、彼が死亡したと思い込んでいました。
しかし、大和は生きていた。
一部の記憶がなくなっていた。
かつての仲間、そして因縁ある関係者との再会により、彼の過去と人間関係が徐々に浮き彫りになります。
死、そして罪の償いという重いテーマが、事件の進行とともに緻密に絡まり合い、 中盤から終盤にかけては、物語のスピード感と感情の深みが一気に加速。
正義とは何か──その問いが、大和の苦悩とともに観客へ静かに突きつけられます。
2. 毛利小五郎の“本気”に泣いた
ギャグ要員としての彼ではなく、ひとりの父親、刑事としての顔が前面に出てきた演出が光ります。
たとえそれがコナンのヒントあってこそだったとしても、彼が真剣に事件に向き合う姿には、自然と胸を打たれました。
普段はお酒にだらしなく、どこか抜けている小五郎。
しかし本作では、事件の本質に迫ろうとする真摯な姿勢、そして娘・蘭やコナンに向けた静かな気遣いが印象的です。
3. サブキャラたちの“静かな存在感”
長野県警の面々や脇を固めるキャラクターたちにも注目。
諸伏警部、綾小路警部補など、これまでシリーズに散発的に登場していたキャラクターたちが、静かに、しかし確かに物語に重みを加えています。
それぞれが抱える葛藤や過去に、観客は自分を重ねずにはいられない。
単なる“推理のコマ”ではない人物像がしっかり描かれており、ストーリーに厚みを与えていました。
4. アクション控えめでも最後まで目が離せない
「最近のコナン映画はド派手すぎる」そう感じていた人には、本作はきっと刺さります。
銃撃戦や爆破も最低限。
それでも、じりじりと迫る緊張感と手に汗握る展開に、目が離せません。
特に終盤の対峙シーンは、心の奥に刺さる静かなクライマックスでした。
物理的な爆発ではなく、感情の爆発が描かれたその場面に、静けさと深みを感じた人も多いのでは。
5. 音楽と静寂が織りなす“情景”の美しさ
本作ではBGMや効果音も控えめに設計されており、“静けさ”がひとつの演出手法になっています。
雪景色の中で足音だけが響くシーン、張り詰めた空気の中に響く台詞。
それらが感情の機微を丁寧に描き出し、映画に奥行きを与えていました。
映画を観た後に考えたこと
大人になると、正しさより重く感じるのが「後悔」や「選択の重み」。
今作が描いたのは、まさにそうした“生き様”だったのかもしれません。
正義は常に正しいわけではなく、善意がすれ違うことで生まれる悲劇もある。
この作品が心に残るのは、犯人が誰かという謎解きよりも、感情のやり取り、人と人との“すれ違い”と“許し”の難しさに、深く切り込んでいたからでしょう。
私たちはどこかで、大友隆のように「選び直すことのできない過去」と折り合いをつけながら生きている。
だからこそ、彼の静かな決意に、自分自身を重ねてしまうのです。
シリーズファンとしての感想
正直なところ、最初は「地味かな?」と思っていました。
でも、観終わったあとに残る“ずっしりとした余韻”は、最近の派手な劇場版では感じられなかったものです。
シリーズを長く追っている人ほど、本作の丁寧な人物描写や、シリーズ過去作への細やかなリンクに気づいて、より深く楽しめたのではないでしょうか。
大和、諸伏、綾小路といった長野県警チームの関係性や、かつての事件への伏線など、熱心なファンほど“あのエピソードか!”と胸を熱くする瞬間があったはず。
“語りたくなる映画”。そんな作品に出会えたことが、何より嬉しいです。
星評価
評価項目 | 評価 | コメント |
---|---|---|
ストーリー構成 | (5/5) | 伏線と回収の巧みさ、心理描写、骨太な物語が光る。無駄のない展開が高評価。 |
キャラクター描写 | (4.5/5) | 大和警部の過去、小五郎の成長、コナンの控えめなサポートが印象的。 |
演出・映像美 | (4.5/5) | 静かな緊張感と丁寧な演出。風景や色彩にこだわりを感じる。 |
サスペンス・緊張感 | (4.5/5) | 派手さを抑えた中で張り詰めた空気が続き、観客を惹き込む。 |
エンタメ性・テンポ | (4.0/5) | 子どもやアクション重視派には地味に映る可能性あり。ただし大人には響く構成。 |
総合評価:
(4.5/5)この映画は、氷のように静かで冷たい表面をまといながらも、その奥に熱く溶けそうなほどの感情を抱えています。
観終わったあと、まるで氷の彫刻を見ていたかのような感覚に襲われる。
形の美しさと、その中に閉じ込められた想い。
時間が経つごとに、その氷がゆっくりと溶けていき、自分の中で物語が染み込んでくる。
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過去の事件や関係性を知ることで、映画の余韻がもっと深く味わえるはず。
まとめ
観終わったあと、ふと静かな気持ちになる映画。
『隻眼の残像』は、語るほどに深く、思い返すほどに胸に沁みてくる。
ミステリーとしての完成度の高さに加え、登場人物たちの心の動きに真摯に向き合った脚本。
それらが織りなす濃密な90分に、いつのまにか引き込まれていました。
「また観たい」ではなく、「誰かと語り合いたい」と思わせるこの余韻。
コナン映画の中でも、きっと“語り継がれる一作”になる。
――あの余韻、あなたも感じましたか?